女川町誌 続編
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〇狐につままれたような話(平成元年四月) 昭和六十三年四月下旬のある日(四月二十四日と思う)、甥おいの遠藤紀正が白い花の沢山ついた枝を一抱え持って来訪した。私はすぐにコブシの花だなと思ったが、念のため、『日本の樹木』という山と渓谷社発行の樹木の原色図鑑を取り出して子細に調べてみた。ところが、コブシの花であれば花弁が六枚であるのに、この花には普通の花弁が六枚のほかにさらにやや小形の花弁が下の方に三枚あり、どう見ても九枚の花弁があるように見えるのである。これは図鑑の説明では、下の三枚の花弁のように見えるものは実は蕚であって、こういう花をつけている木はタムシバという樹木で、日本海側に多いものであると述べている。私はタムシバという木は初めて見るので非常にうれしくなり、紀正と二人で何回も、いくつもの花の花弁を数えて確かめたのである。以後、この木のことを何人かの人に話してもきた。 ところで、平成元年四月九日に紀正の車でこの木の生えている針浜に行き、車を乗り捨てて山に登ってみると、今年は暖かなのでもう開花していた。喜んで花を採ってみて驚いたことに、紀正と何度花弁を数えてみても、九枚の花弁のものは一つも見当たらないのである。一体こんなことがあるのであろうか。夢を見ているような、あるいは狐につままれているような話であるが、結局、今後も春ごとに観察してみようということで結論は先に延ばすことにしたのである。 二 あべくらさんの鳥獣病院 全国的に知られる出版社の一つ旺文社が、昭和五十年代後半に小学生を対象に「人間と動物 愛のシリーズ」を刊 ♡ 414

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