女川町誌 続編
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御殿道を一本杉まで登り、それから火防線上を西に進み、仲瀬の家のスレート山の手前から下山した。火防線の途中にリュックサックが三袋あったが、おそらく火防線の草刈りが始まるのであろう。草刈りが始まると歩き易くはなるが、観察の対象がなくなるので丁度いい日に来たと内心うれしかった。 鮮やかな黄色の穂状花序で丈が六〇ないし七〇 センチメートルくらいの菊科に属するアキノキリンソウがまず沢山目についた。これに比べると、一つ一つの花も小さいし黄色もあまり冴えないが、花が沢山ついている点ではひけをとらないヤクシソウ(菊科)も三〇 センチメートルくらいの高さで風に揺られていた。菊科ではあるが、紅紫色のアザミ及びその近似種が点々と散在しているのが中々綺麗である。アザミ類もよく調べれば色々あるに相違ないが、私にはヤマアザミ・ダキバヒメアザミが識別できる程度である。タムラソウは花だけを見るとアザミのように見えるが、深い切れ込みのある葉は刺とげがまったくなく、素手でさわっても痛みを感じることはない。トウヒレンも同様で、花だけを見るとアザミとの区別はほとんどつかない。しかし、葉は三角形で長い柄があり、これまた刺が全然ない。 高さ七〇 センチメートルくらいで比較的大形(径三 センチメートル)の朱赤色の花を付けているのは、フシグロセンノウ(ナデシコ科)である。この野草は栃の葉書房で出している『山草事典』等には関東以西の植物として取り扱われているが、女川辺にも沢山見られるものである。また、フジバカマに似ているヒヨドリバナ(菊科)やヨツバヒヨドリバナ(菊科)等はきれいな花ではないが、高さ五〇 センチメートルくらいで白い小さい花が散房状という形に茎の先端に沢山ついており、やはり目立つ秋の山草の一つである。最後にひどい草藪ではなく、どちらかというと道端の比較的雑草の少ない所に見られる黄色の三 センチメートルの桐の花の形をした花が見られるが、これはキバナアキギリ(シソ科)である。女川辺ではこれも多く見られるものであるが、本には本州中部以西に分布しているように載っている。 412

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