女川町誌 続編
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昔ある所に鷹匠たかじょうが居て、鷹が傷つくとある植物の汁で治療していたそうであるが、周囲の人たちはなんとかしてこの植物を知ろうとして、この鷹匠の弟をだまして聞き出したところ、鷹匠は大いに怒り弟を直ちに斬ったので、その秘密の野草にオトギリソウ(オトギリソウ科)という名前がついたといわれるが、そのオトギリソウも今が開花期で、端麗な姿の頭部に黄色の小さい花をつけていた。大形の野草であるタケニグサ(ケシ科)は二㍍ほどの高さがあり、これに相応する大きな葉をつけているが、円錐形の花序もまた大きく、現在では花序の下半分は扁平へんぺいな多くの実になっているので、花序の上半分は白く下半分は黄色がかった実の色になっている。この野草はどこを折っても黄色の汁が流れるのですぐ判別できるようである。この野草と共に竹を煮ると竹が細工しやすくなるというので竹煮草という名がついたといわれるが、実験してみるとそうでもないということである。カノツメソウ(セリ科)は一名ダケゼリともいわれるが、葉の形が鹿の爪の跡に似ているというのでつけられた名前であるということである。白色の極めて小さい花が咲いていた。ヌスビトハギ(マメ科)の淡紅色の花は可憐であり、鑑賞のために栽培したいくらいのものであるが、どうしてヌスビトなどという名がついたのであろうか。 山野草ポケット図鑑(栃の葉書房発行)によれば、実は半月形で二つつながり、この形が盗人の足跡に似ているというところからこの名がついたと記述されている。とにかく今山道を歩くと、この淡紅色の総状の花が目に飛び込んでくる。最後はこれもひどい名前で恐縮であるが、ヘクソカズラ(アカネ科)が周囲の木や草に巻き付いてよじ登っており、節々からの柄のついた灰白色で内面が紅紫色の筒形の花を沢山つけているのが目に付く。花の後、黄色の小さいまるい実がつくが、これは「しもやけ」の薬になるといわれる。名前の由来は葉も茎も実も、もむと強烈な悪臭がすることによるのだそうである。天気の方は予報が大きく狂い、一〇時前からひどい霧雨になった。 407
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