女川町誌 続編
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下りに差しかかってからは、ヨツバハギ(マメ科)やウツボグサ(唇形科)を見たし、自分には不詳のものも幾種類かあったが、これらはまた開花期を待って調べてみたいものである。 こうして山の中に心を残して置くと、遠い山でも自分の庭のような愛着を感じ、次の訪問が待遠しいが町内にはこうした場所が数多くあるので来る日も来る日も楽しいのである。 〇八月五日(水曜日) 今日午前中は降雨確率八〇㌫、午後三時からは九〇㌫という極めて険悪な天気予報なので急いで御殿峠の中腹までを歩いてみた。山百合の花が見られたが、その数は多くない。 しかし、そのふくいくたる香りには圧倒される。一方、これと対照的なのは車百合である。姿も小さいし色もまた赤みを帯びた橙だいだい色で、成人した婦人とオカッパ姿の少女の違いがある。数年前石投山の近くでオニユリとコオニユリとを採集したことがあり、それが両方とも拙宅の庭に植えてあるが、ちょうど今咲いているので、石投山の現地でもおそらく咲きほこっていることであろう。同じ百合でもウバユリとなるとぐっと地味になり、あまり目立たない。緑がかった白色の花で大きさは山百合の花とそれほどの差はないようである。これも今が開花期で藪の中にいくつか見られた。道端の草花は月日の経過とともにどんどん姿を変え、先ごろとまったく別種の花が見られた。黄色の小さい花ではダイコンソウ(イバラ科)・ミツモトソウ(イバラ科)・キツネノボタン(ウマノアシガタ科)等が多いが、これらはどちらかというと道端の湿地に見られるようである。ハイドクソウという根の汁でハエ退治ができるというハイドクソウ科の野草も多く見られた。これは花があまりにも小さいのでほとんど人に気づかれないままに枯れてしまうからであろうが、専門家の間では注目されているもののようである。かつてはクマツヅラ科に所属させられてい405

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