女川町誌 続編
426/596
記念第十七回全国青年大会等に出演して高い評価を受けた。保存会のこうした努力により、法印神楽の古い型を伝える江島法印神楽の価値が次第に世に認められ、昭和四十六年三月二日、宮城県重要無形文化財の指定を受けることになった。地元の女川第三中学校も課外活動にこの神楽の伝承を組み込み、対外的な発表活動を通じて、島の子供たちの社会性の向上に大きな効果を上げた。しかし、最近は急速な過疎の進行のため、児童・生徒数の減少と青年層の流出、舞い手の高齢化が重なり、江島法印神楽保存の前途は極めて厳しい状況にある。 法印神楽の舞台は、二間四方の組み立て式で、四方の柱に忌み竹を結び立て、三方を吹き放しとし、舞台天井に「大乗」と呼ばれる天蓋を下げ、「千道」と称する切り紙を四方の注連しめに引き回す。舞台の正面は、幕で仕切って後ろを楽屋とし、楽人は幕を背に並ぶ。演題によっては舞台上手に橋をかけ、竜宮御殿と称する小舞台を設けて鬼女のすみかや、岩屋、産屋などにする。楽人は大太鼓を受け持つ胴とり(胴前ともいう)と笛から成る。楽人、舞人共に白衣の腰から上を脱ぎ垂らし、舞人はその上に古代布の装束を着け、御幣を挟んだ焚天、扇、太刀を持つ。 新楽は胴とりが謡う神歌「打ち鳴らし」に始まり、舞人が祝詞のりとに当たる神諷かんなぎを唱え、舞いに入る。舞いは足の踏み方により「ねり」「四方切り(四方固め)」「巻鉾」「扇たたみ」「左右の扇さし」「淀の早船」「九陽寅」「走り足」などと呼ばれる型が伝承されている。打ち鳴らしは、いわゆる神寄せに当たり、江島法印神楽では詞ことばは次のとおりである。 打ち鳴らし、打ち鳴らし 千早振る神代より伝うこの太鼓 神(鐘)に五水(衰)の夢さめて 打つ度び毎に神ぞ喜ぶ 阿呍あうんの二字を聞くぞ嬉しき 仮面は魔王、三天、鬼門など三〇面が伝わる。 394
元のページ
../index.html#426