女川町誌 続編
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め来町した鈴木長治(宮城農業短期大学教授)が、タブノキの傍らのこの木を目にし、その大きさに驚き、町の天然記念物に指定するよう推奨したものである。 ⑶ 三十三観音の大杉(仮称) 天然記念物指定の際の名称は「三十三観音の台杉」であった。これは鈴木長治の「この杉は京都北山の台杉であり、おそらく東北地方唯一のものであろう」という言葉に従ってのことであったという。 昭和六十三年、町文化財保護委員会でこの名称についての適否が論議され、小林満寿男(植物学者、元東京学芸大学教授)に問い合わせた結果、次の二点から台杉の名称は当たらないとの結論を得た。 ⑴ 日本の杉は日本海側のウラスギと太平洋側のオモテスギが区別されるだけで、特産地の名を冠して呼ばれる北 山杉、秋田杉などには分類学上の意味はない。 ⑵ 台杉は人工的な北山杉育成の過程での「台とする杉」という意味にすぎない。 その結果、委員会としては「三十三観音の大杉」と呼ぶことにしているが、まだ名称変更の手続きが完了していないので、仮称としておく。 この大杉は推定樹齢三〇〇年以上といわれるから、独国和尚が三十三観音を建立した文政七年(一八二四)には既に樹齢二〇〇年に及ぶ巨木であったろうと思われる。独国和尚が三十三観音建立を現在地に決めるに当たって、この大杉の所在が大きくはたらいたのかもしれない。この大杉は枝が垂直板状(断面が垂直方向に扁平)であるという特 392

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