女川町誌 続編
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ジオその他の広報手段を通じて一般に津波警報が公表される。しかし、この警報の「打率」が必ずしも満足できるものではないのである。たしかに「見送り」、つまり警報がでないで津波が来るというケースは非常にまれになってきたが、「からぶり」、すなわち津波警報がでて、じっさいには津波が来ないケースがしばしばおきている。どのくらいの規模の津波が来るのかについては、現在採用されている方法では予測が非常に難しいとされている。そのわけは、過去の例を見る限り地震のマグニチュードと、それによってひきおこされる津波の規模とが、大変ばらついた関係しかないことによる。たとえば、史上最大の津波である明治三陸津波(明治二十九年=一八九六)の地震のマグニチュードはわずかに六・八であったとされる。通常、被害を生ずるような津波の原因となる地震のマグニチュードは少なくとも七・〇以上、ことに大規模な津波被害を出す場合には七・五以上というのが、多くの津波の統計の示すところである。つまり、明治三陸津波はこの大まかな法則性に大きく反して、地震が小さい割に非常に大きな津波を伴った例であった。現在採用されている津波の予測方法ではこのような事例には対処できないことになってしまう。 明治三陸津波のような、地震マグニチュードの割に津波の規模が異常に大きな地震は「ツナミ地震、Tsunami Earthquake」とよばれ、「今おきた地震がツナミ地震であるかどうか」の見極めが警報の「打率」の向上に欠かせないことは明らかである。固体地球の分野でも活躍する一群の若い津波研究者のなかに、地震波形を解析して、この「ツナミ地震」であるか否かを見極める技術を開発しようとする動きがある。江ノ島は三陸海岸でもっとも日本海溝の海溝軸に近い所に位置する。したがって、津波の観測点として有利であるだけでなく、このような地震波の解析研究のための地震データを採集する基地としても、たいへん有利な場所である。 このようなことから、昭和六十三年(一九八八)から沿直速度受感部を備えた地震計が設置され、地震の観測を開 380

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