女川町誌 続編
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はじめに この三〇年間は、教育界にとっても激動の時代であった。教員の思想・信条の対立による教育現場の混乱は昭和四十年代後半から次第に鎮静に向かったが、急速な経済成長に伴う社会環境の変化は、必然的に学校教育の基盤である家庭教育の変質を伴い、児童・生徒の内面性を急激に変容させる。核家族化の進行と女性の社会進出は、事の善悪は別として、いわゆる「カギッ子」発生の直接の原因となり、親と子の親密な接触(スキンシップ)を阻害し、幼時において確立されるべき躾しつけがおろそかになるという、家庭教育の弱体化をもたらした。何によらず変化は急激であればあるだけ、大きなひずみを伴うもので、シンナー遊び、家庭内暴力、校内暴力、学校嫌い、いじめといった、これまで考えもされなかった異常な問題が全国的に続発し、教育界は臨床的対応に精いっぱいといった状況が続い た。こうした過渡的現象から脱却のきざしが見え始めたのは、ようやくここ数年のことである。 こうした時流の中で、「わが町だけは」の願いはごく自然の情ではあっても、現実には望んで得られるものではなく、本町でも、町民を仰天させ、心を痛ませた悲しい事件が無かったわけではない。今後もまた避けることのできないことと覚悟して、衝撃的な事件に直面した際に地域社会がとるべき姿勢を考えておくことが必要であろう。事件そのも 296

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