女川町誌
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「いそ」には二つの様式があつて第一は打ち上げられて来る水産物を採集したり、あるいは浅い海に入つて海藻類を採集する漁法をいい、第二は「いそ釣」であつて、「サッパ漁船」に家族が一・二人乃至三人乗つて、あまり深くない海底の海介類を、原始的な漁具をもつて捕獲する漁法である。女子労働力が従事するのは、本来の意味の「いそ」が主である。「サッパ漁船」にのつて海底の海介を捕獲する漁法に従事する女子は少数である。「いそ」はコンブ・ワカメ・ノリ・角又・アワビ・ウニ・タコ等を採集する。「サッパ漁船」でとるのはアワビ・ウニ・タコ等であり、磯で採集するのは、打上げられたワカメ・角又・ノリ・コンブ等である。これらの水産物には各々シーズンがある。タコは十月の始め頃になると本吉郡の志津川を出発するタコが、江島沖合の平島を指して南下し、金華山を通つて福島沖へ南下する。この季節になると江島の漁夫は朝二時に起きて三時出漁、平島を目指して「サッパ漁船」を乗入れる。昼はこのあたり漁船や貨物船の出入が多いので漁場が荒される。そこで江島の漁夫は早朝に漁場に出掛けて、思う存分タコの大群にいどみかゝるのである。このようなタコの流動についてはまだ科学的な研究が行われていない。このタコは十月から始まつて翌年一月まで続く、アワビの口開は十一月五―七日頃で三月の中頃まで続く。三月の中頃からワカメの季節になるが、九月まで断続する。コブは七―八月、ウニ・角又・ひじき等は、この四月から九月に至る夏を中心とするこの四乃至五か月の間は海藻類の漁期で「サッパ」のかき入れ時である。ノリはこれに反して冬期を中心とする時期で、十一月の終りから翌年の四月中ばにかけて採集される。ナマコも同じく十一月始めより翌年三月の始めまでがそのシーズンである。これらの各漁獲物には、それぞれの口開けの日がある。口開けの日になると各「サッパ漁家」から家族労働力が総動員される、小学校・中学校もこの口開けの初期には一・二日乃至一週間の休暇になる。しかし口開けは今日開いたかと思うと翌日には閉められることがある。これは漁844

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