女川町誌
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最も重要な問題である。⑴女子労働者の労働様式先ず家族協同労働の中に見える婦人の漁業労働「サッパ漁家」の大部分は、家族的協同労働の上に成立している零細漁家である。その生産手段は実に低劣で、先にもいうように、「サッパ漁家」の生涯は一トン漁船一隻である。約三分の一は、一トン漁船すら持たない漁家がいる。四季折々の漁族の廻遊やその漁獲の季節に従つて、釣道具が変つたり、手で使う漁具が変る位なことで、目星しい漁具といつてはない。漁具の材料や漁具の構成に多少の改善進化があつたとはいえ、その漁具の性格は日本古来の伝統的な漁具である。これらの小道具をもつて一隻の無動力漁船をあやつゝて沿岸に作業し、好天に恵まれては出漁するが、一度海が荒れると出漁し得ない。月平均二〇日の稼働がせきの山である。船をもち、しかも家族労働力の欠乏している漁家では、雇傭労働をするし、家族労働力が多過ぎて労働力の活用が出来ない家族では、他人の「サッパ船」にもぐり込む、優秀な労働力は資本主義経営の間に吸収されてしまう。こういう状態であるから、この家族的協同労力のサッパ漁業の中には、今日も尚極めて原始的な婦人漁業労働が残存している。耕すに一畝の畑もなく、山林もなく、専ら漁獲場によつてその生活をさゝえねばならない「サッパ漁家」によつては、この協力労働体内に残存している婦人労働こそ、最も特色のある、そしてこれらの「サッパ漁家」が近代科学よりも、むしろ自然的生産に頼つているということを強調する最も端的な表現であると考えてよい。それではこの「サッパ漁家」の協同労働体内に残在している女子の労働は、果して如何なる様式をもつているのか、われわれは江島の資料からこれを摘出して、大様四つの様式に区分することが出来る。842

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