女川町誌
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第四節米騒動と米価一、天明年間の米騒動米騒動と言う事は昔からあつたと見える。天明の昔の事であるが封建性の領主が国用米を買上げる。奸黠の徒が買占を企だてる。米価は日々に騰貴する。加うるに天明の凶歳にあうと言う状態で庶民の苦しみは絶頂に達した。時に石巻仲瀬に勃発した米騒動事件である。安永の末年から天明の初めに当り国民の思潮は険悪に走り、徒党強訴の騒擾は一朝上州に起り、延いて諸国に瀰漫し、無頼無宿の凶漢が所々に雑居して頗る横暴を極めた。藩は其の当時の大目付に文を下して肝入・検断・組頭等を戒飾した。等ありて取締を命じて居るが、天明二年冬期の違例は翌三年の収穫に著しく影響して、其の額が平年に比し四割にも及ばなかつた。故に国用米の買上に頓挫し、奸黠の徒は密に巧計を案して買占を行い、米価は日に日に騰貴し上下心を痛め人心恟々として世上は穏でなかつた。天明三年十月十八日俄然一大騒擾は当時河原であつた今の仲瀬に勃発して蔵守を襲うと言う珍事を惹起した。456

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