女川町誌
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下男と同じ性格をもつている。その年間に行う各種の漁業に従事し、又農業等の兼業にも従事するわけである。全く孤立分散していることは上述三群とは比較にならない。雇傭関係も全く曖昧である。「分散的な小規模な搾取は勤労者を一か所にしばりつけ彼等をばらばらにし、自己の階級的連帯性を理解する可能性を彼等に与えず、また抑圧の原因はたれかれの個人ではなくて、すべての経済的組織であることを理解して彼等が団結する可能性をも与えない」のである。この年雇漁夫は農業年雇と同一範疇に属するけれども、農業においては貧農がプロレタリアの本隊をなし、年雇はそれに連なるところの特殊な層にすぎず、その数の小ないのに反し、漁業における年雇季雇下男は分散した無組織の債労働者であるが、その数においては家族従事者を除いて、漁業において最大の労働者群である。この年雇漁夫と地主的乃至富農的世帯経営との関係は漁業労働関係の基底となつている。第八節女川漁業の基礎「サッパ」女川漁業に於て最も特徴的なものは沿岸漁業である。そして是等の沿岸漁業の多くは零細漁家即ちサッパによつて営まれている。その零細漁家の多くは一トン未満の無動力小漁船によつて、旧来の原始的漁業形態に沈潜しつつ、やつとその生活を維持している漁夫群なのである。この零細漁家が女川漁業の基礎をなしているので、ここでは主として零細漁家について検討して見ることにする。女川には六三七戸の零細漁家、即ち「サッパ」がある。昭和二十五年の国勢調査によれば女川の全世帯数は二、七388

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