女川町誌
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当港を根拠として出漁する者漸次其の数を増加するに至り、漁場の開発年を逐うて盛なるに至る。而して背後に石巻の繁華を控へ、又東北の大都市仙台を距る僅かに十二里に過きずして此の海陸天然の配置は自然に当港に対し漁獲集散を要求するものにして、所謂漁港としての一大価値の存する所なりとす。唯陸上交通運輸の便に於て遺憾の点なきにあらさるも本年法律第三十七号を以て鉄道敷設法発布せられ、松島より石巻を経て当港に至る鉄道を認めらるゝに至り。又近く開通せらるへき石巻女川間の軌道に依り、海陸交通に一新機軸を画し陸上交通不便の恨事も玆に解決せられ、漁港の真価を益々発揮し得へしと信せらるゝなり。政府に於て三陸沿岸に一港を選択し、漁港修築の御計画あるやに聞知致し候に付ては、漁港の第一要義として大漁場に最も近接せる当港に重きを置き、唯一の候補地として御調査中に可有之拜察致し候得共、尚宜く御調査の上当港を御指定相成、女川鉄道の完成と相俟て此の天然の良港に対し適当なる設備を施し、本邦水産業開発の為金華山漁場に対する太平洋沿岸多数漁業者の一大中心根拠地とせられんことを謹んて請願 候也。 大正十二年一月二十三日 石巻町長 武 山 一 郎 渡波町長 菊 池 明 夫 蛇田村長 菅野又 甚三郎 稲井村長 高 橋 武 治 女川村長 松 川 豁 荻浜村長 松 浦 留 太 郎 大原村長 渥 美 長 治 郎 鮎川村長 後 藤 久 治 郎 衆議院議長 奥 繁三郎 殿 松島女川間鉄道並三陸沿岸鉄道速成に関する請願 (両院議長内務大蔵大臣宛) 宮城県牡鹿郡石巻町民等、謹みて石巻を起点としたる松島女川間鉄道並飯野川柳津を経て志津川気仙沼に至る、所謂三陸沿岸鉄道を大正十二年度より敷設せられんことを切望仕候其の理由は左の通に候也。 理 由 一、女川港は石巻を距る陸路四里太平洋に突出せる牡鹿半島の北東に在り、湾口大に水底深く巨艦大船を舶すべく、又湾外は所謂世界三大漁場の一たる金華山沖にして漁獲物甚だ多 282

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