女川町誌
336/1094

其他夏季製造盛繁期となれば、人口の増加六百七十人製造家(拾二戸)にて使用計五百人以上の人口を有して居るのであります。 然るに現在の処飲料水を得るにも困難を来たし居る状態であります、鉄管を刺し込むと言ひとも地質の関係上湧水するも塩分含有の為飲料として用をなさず、漸く滴水に等しい山間よりの流水を利用して居るのであります。斯る状態でありますから無論火防用としての水源には乏しいのであります。 只一縷の頼りともなるのは臨接せる小川であるが、之亦干潮の際に頼むに足らないのであります。併し何としても一朝火災が起つた場合には、此の小川の水を利用する外途がないと思はれます。然るに此の小川には現在架設されて居る橋梁は只一個の土橋あるのみであります。然るに此の土橋も腐朽し一時は自動車及荷馬車等も通ずる事能はず是に対し町当局も何等考慮せざるに付、昨年の春地区の人々の協力を得壱万五千円也を以て改修をなしたものであります。 添付せる地区略図を閲覧なされても直ちに御分明の事と考へられますが、当地区は道路としては南に面し女川橋より入るに九尺の道路あり(人道)北方の道路としては前記の通り土橋一ヶ所より外通じる道はないのであります。然るに若しも北方より一朝火災が起つた場合、女川消防完備の為我々地区にて拾数万円に上る寄付をなし、設備をしたと言ひ共不完全なる橋梁、或亦狭隘なる道路の為如何に消火につとめんと焦慮するも、ポンプ其の他消火用重量器具を運搬する事能はず、傍観視するも止むなき事に立至るのであります。斯る場合全地区内は殆ど烏有に帰せねばならす。又恐れなしとは言ひ難いのであります。次に区民の避難等をも痛切に考へさせられるのであります。東北に面せる地帯は絶壁極まる山野、南方に面しては通路狭くして混雑の場合は危険に襲はるゝ事にもなるのであります。是等を考ふれば何としても完全なる橋梁の架設が必然的急を要するのです。尚都市計画内に当地区の実情御賢察の上、急速に完全なる橋梁を地区略図に示したる個所に架設下さる様一段御配慮煩し度御願ひに及ぶ次第であります。 以上 昭和二十五年四月二十九日 女川町長 木 村 主 税 殿 町会議長 木村庄左衛門 殿 請 願 者(省略) 268

元のページ  ../index.html#336

このブックを見る