女川町誌
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第三節 大正・昭和の道路 一、本邦道路法の制定 道路は交通上最も緊要な機関で、之が改良整備は産業上・国防上及び各般の行政上、一日も忽せにすることの出来ない重要時務の一つである。然るにわが国道路の現状を観るに、全国交通の幹線である国道で、なお賃取橋または渡船場によつて僅かに交通を連絡し、その他の道路にあつても路幅勾配等が不十分で、人馬諸車の交通に適さないものが少くない。 これは蓋し封建の諸候が、ことさらに交通の便を避け、割拠の風をなした餘勢によるものであり、また鉄道の開通に伴つて一時道路の必要を閑却したこともその原因の一つであつた。 そして在来の道路法規は僅かに道路の種類及び等級に関する明治九年の大政官達と、土木費負担所属区分に関する明治十一年の大政官達とがあつたに過ぎない。しかもその規定たるや頗る簡単なもので、僅かに取扱上の慣例に依つたものであつた。殊に道路の管理に関しては判明を欠いていたので、往々にして紛議を醸し、事業の進捗をはばむことが大であつたのみならず、道路の整備改良上の一大障礙となつていた。 近時の交通の情勢に顧れば、道路を利用する動力による運輸機関の発達に伴い、交通上に於ける道路の価値は愈々顕著となつた。従つて道路の改良発達の必要を感知すると共に、速かに統一的道路法規を制定して時勢の要求に応ずる必要が一段高まつて来た。 次に佐上信一氏著『道路法の概要』より、道路法制定の沿革を抜萃して転載する。 259

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