女川町誌
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理由女川港は天然の良港にして大船巨舶の出入碇泊に適し港外は世に謂ゆる金華山沖の好漁場なり。更に米国航路の最短距離に位し産業貿易軍事等其の利用の範囲極めて広大なる能力を具有す。此を以て政府は女川鉄道を敷設して東北本線に連繋し、昨年十月之が開通を見るに至り地方産業の開発に資する所甚大なるものありと雖も、鉄道臨港地域に於て荷揚場の地積に乏しく、又適当なる岸壁を有せず、随て本港天恵の機能を十分発揮せしむる能はざるにより、荷揚場の増設岸壁の築造等により海陸の連絡設備を完成するを要す。本港の修築は東北振興上、国家経済上、更に軍事上、其の利益する所広汎にして国策遂行上当面の急務なるを痛感せらるゝに依り、速に修築せらるゝ様格別なる御詮議を賜度奉懇願候。昭和十五年九月二十四日宮城県会議長飯塚千尋三、修築工事着手の状況昭和十二年計画樹立の修築工事は、町民の大なる希望を荷つて同十六年四月一日宮ヶ崎東部より石浜に向つて埋立並に護岸工事を開始した。時既に第二次欧州戦争勃発し我が国も亦同十六年十二月八日米国に宣戦し、第二次世界大戦に参加したのである。従つて工事用セメントの配給甚しく窮屈となり、屢々県土木部に陳情して間に合せたけれども、次第にその度を増し工事打切りの見透しすらされ、且つ将来必ずしも再着工も確ならざる状態になつたので、昭和十七年度十二月内務省に対し工事継続方の陳情書を提出した。更に同十八年三月二十六日時の町長須田金太郎氏は、空襲警戒警報下の東京に行き、内務省大蔵省に軍事上より見たる女川港を説明して工事継続方を陳情し、陸軍省海軍省横須賀鎮守府に対しては、現に海軍防備隊の根拠地もあり軍部の女川港利用上から是非工事の継続方を支援せられたいと懇請し、更にセメントの配給と工事継続方につき企画222

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