女川町誌
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音介氏理事磯村利水氏と共に来りて視察し、町会議員及び有志諸君と会見し、当港は独り天然の良湾たるのみならず、近く世界三大漁場の一なる金華山沖を控へ、且つ渡米航路を短縮し得べき好位置に在り、他日鉄路一たび通せば海陸交通の要衝と為り物産集散の中枢と為るや必せり、然らば即ち利用範囲極めて広大にして、地方産業の発展は勿論東北振興を策する上に於て亦一日も閑却すべからざる地点を占め、漁港として商港として将来寔に有望なるを賞讃し、地方有志と相提携して力をこれが開発事業に輸さんことを約す、人々皆以て時機到来と為し翕然これに賛同す、翌四月再会見に当り町会議員有志諸君町当局と相謀り女川振興組合を組織し、磯村氏を推して其の長と為す、組合員総数四百三十七名に達し、爰に始めて女川湾開発の曙光を見るを得たり、同十四年六月女川振興会と改称し大女川建設を以て目標と為し、之に達する階梯として先ず水産業を中心とする漁港の設備を企て町当局と相呼応して日夜奔走す、既にして経営緒に就き先きに町に於て許可を得たる海面の埋立に対し其の工事を寄附し、又公私有の土地山林原野荒蕪地等を買収して或は埋立て或は整理し、更に岸壁を修築し海底を浚渫し以て漁船の繋泊鮮魚水揚及び出港の準備に便ならしめ、同時に埋立新地附近一帯区画整理を行ひ、街衢の井々を期し、魚市場・荷扱所・加工製造所・製氷所・冷蔵庫・商店賈肆・住宅用地並に道路等力めて農林省調査に係る漁港計画に準じ之が配備を為し尚金融機関として欠くべからざる信用組合及び之に附属せし水産倉庫の創設をも促し之れ亦其の成立を見るに至れり、如上埋立整理合せて約参万坪、浚渫約弐千坪、岸壁延長二百五十餘間にして総費額約弐拾五万円を投ず、是に於てか一漁村女川は蔚然として繁盛の都邑と変じ漁港開設の基礎完く成り、所期の目的を達したるを以て遂に本会を解散す、時に昭和五年八月也嗚呼大なる哉振興会の功労豈に其れ没すべんけや、頃者有志胥謀り之を貞珉に勒して以て後世に伝へんと欲し、町長松川豁氏を介して文を余に求む因て其の顚末を聴取し梗概を記すること如斬維時昭和六年十二月二十日正七位勲六等千阪庸夫撰併書会長磯村音介副会長磯村利水理事須田金太郎小松七治郎阿部竹治郎鈴木喜六丹野磨鈴木忠五郎平塚良作植木新作木村熊藏194

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