女川町誌
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には出島・江の島等の諸島散在し、東南に金華山の横たわるありて防波の設備自然に備はり、湾内常に静穏にして激浪を見る事なく水深亦其度を保ち、加ふるに天恵の湾曲宜しきを得雄勝湾に隣接して大小船舶の繋留避難に好適せる良港にして、而も先年英国及露国の軍艦入港したる事あり、近くは又我サガレン派遣軍の出発地点となされたるが如き、国家有事の際枢要の地たるを認めらるゝの良港たり、今や陸上設備として石巻町を起点とする金華山軌道の敷設せらるるを以て、之が完成の暁には海陸交通上に新機運を開くに至るべく、殊に第四十四会議に於て鉄道布設法案を提出するに当り、松島・女川間の鉄道を其線路内に加へられ之が実現を見るに至らば、益海運運輸の状勢に一進路を開拓し漁港の真価を見るに至るべし。又昨年本県会より意見書を提出したる本県気仙沼港は県の東北端に位置し、天恵の地勢は鼎足の湾曲を形成して市街地に接続し前面大島の横はるありて天然の防波設備自ら成り、湾口蜂ヶ崎の地峡浚渫の県工事漸次豫定の計画に進捗し、内湾の水深亦頗る深く静風穏波巨浪を見る事なし、而して三陸航路の要衝に当り近傍唯一の船舶避難港として好適なるのみならず、大小各地の漁船同港を根拠として出漁するもの殆んど数百艘に達せんとす。而して同港を中心として漁獲水揚するもの、製造加工の上輸出するもの総計八百万円を突破せんとするの現況にあり。殊に製造加工の水産工業輓近著しき発達を遂げ、鰹節各種罐詰の如き其巨額なる製造高と品質の優良なるとは先進各地を凌ぎて我国有数の位置を占むるのみならず、気仙沼産竹輪蒲鉾の如き其販路京阪・四国・九州・朝鮮に及び其産額と名声とは全国斯業に冠たり。若し夫れ陸上の設備に至りては一関・気仙沼線工事既に半に達し、大正十四年度に於て完成すべく気仙沼・前谷地線も亦近く実現を見るに至らば、陸上交通状勢に一大機軸を劃すべく其他電力事業・製氷事業・倉庫業・造船業・鉄工業等既に完備の域に近づきつゝあるの状態なり。水道工事も亦両三年にして完成を見んとするの状態にして、漁港の要求する各種要件を具備せしむべく努力しつゝあり。宜しく現下の情勢に鑒み産業開発のため三陸沿岸中漁港として適地と認むる気仙沼、女川両港につき親敷御調査の上、其一港を選択し国庫補助漁港として御指定相成候様御取計相成度。右府県制第四十四条に依り意見書提出候也提出者亘理晋184

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