女川町誌
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鮎川港本港は牡鹿半島突端に位し金華山沖漁場を控へ最重要なる漁港なり、湾内狭隘なれとも深く一二千噸の大船を入るゝに充分なり、然れども僻陬の土地なるにより多くは一時的避難船を停むるに過ぎず、常時出入船としては捕鯨会社の捕鯨船と北海道よりの炭船(四五百噸より千五六百噸)にして、其の他普通の帆船漁船及発動機船は石巻港と同様なり。女川港本港は湾内深く外海の荒波を避け深度大にして五六千噸級の船舶も亦た自由に出入し得、然れとも目下の状勢は大船は多く避難船にして常時出入の船舶は渡波港と大差なく二十噸未満の漁船を主とす。結論要するに本地峡開鑿の暁最も利用の程度多きは、金華山沖の各漁船及本県沿岸に物資を供給する六七十噸迄ての船舶にして、北海道並に三陸沿岸を航行するものの内百五十噸乃至三百噸の船舶又盛に利用することゝなるべし、故に将来を考ふるに仮令塩釜築港完成して一千噸級以上の船舶常に繋留するに至ると雖とも、此の地方近海を航し物資の円滑を計り地方開発に資すると共に、本県各港凡て海運業者及漁業者をして其の恵沢に浴せしむるは五百噸迄ての船舶にて充分にして、経済上又た最も寄港多きものならんと信す。翻て之を地峡開鑿万石浦浚渫工事より見るも、徒らに断面の大なるは工費多額に要するのみにて大船の地用の程度少なく頗る不経済の異なり、故に運河航行の船舶は之を五百噸級のものと定めんとす。深さ及幅上記に依り五百噸級の船舶に対する船型を見るに、その大さ必すしも一定ならす、故に現在使用せられつゝある多くの船舶を調査し之に多少の餘裕を附し左の如く定む即ち吃水十二尺四寸、船長百六十八尺、船幅二十二尺、従つて一艘の航行に要する深さは少なく即ち運河底面は中央に五百噸の船二艘の通航に支障なからしむると共に、その左右は共に幅員十二尺乃ち二十噸前後の帆船漁船の往復滞留に便ならしむるものなり、尚ほ左右岸の餘裕は小舟の繋留、又は荷揚等通行の船舶に障害を与へすして自由に為さしむるものなり、又水深は計画水位(即平均水位)以下十五尺五寸とせるは吃水十二尺四寸に対し、約三尺の餘裕あるを以て多少の181

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