女川町誌
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第一章地峡の位置及四囲の状況女川地峡は牡鹿郡女川村字鷲神女川湾と同村字浦宿万石浦とを境する狭隘なる地域にして道路、田畑、山地よりなり其の延長九百五十間なり。女川湾は桃生牡鹿両郡の半島相迫りて湾内深く入り込み、外海の荒浪を遮るに江ノ島・二股ノ島其他多くの小島あり、波静かに水深く天然の良港たるや論なし、然るに万石浦は県下枢要の漁港たる渡波町を控へ、且つ水産物豊富なりと雖も不幸にして水浅く干潮に際しては同時に渡波港に通する一定の水路を浚渫すると共に其の湾口を拡張せざる可からず。第二章地峡開鑿工事一、開鑿工事計画理由地峡開鑿工事に関する理由は多し、其遅速は県下産業通商の振興に及ぼす影響大にして必要の度は年と共に加はるのみなり、即ち従来は仙台湾及金華山沖漁場方面と三陸沿岸並に北海道方面との航海に於ては、遠く金華山沖を迂回し激浪突風と戦ひ多くの費用を投じ数多の困難を期せさる可からす、然も一朝暴風雨に際会せんか交通全く途絶して百貨頓に停滞し、時日を空費し避難難破の船舶は牧挙に遑あらす、かゝる現況なるを以て此等の障害を除却し航行の安全並に航路の短縮を計らんとするは之れ地峡開鑿の第一理由なりとす。更に本県重要港湾の貨物仕向地を調査するに、鮎川・女川・渡波等は勿論塩釜・石巻・気仙沼諸港の如くすべて其の貨物は金華山沖の南北に経由するものにして、迂回による燃料の損失は勿論時日の空費航行不便不能等により三陸沿岸の発展を暗々裡に阻止すること頗る大なりと云ふべし、これ工業企画の第二の理由なりとす、尚ほ近時陸上交通機関の発達改良に伴ひ、百貨の集散遽かに増大し従つて各港湾の出入船舶亦た年と共に噸数を加ふ可く、况や塩釜港完成の暁には通商の区域も従つて拡張され文化的施設は僻陬の地点にも及ぶ可く、渡波港女川湾の利用は期して待つべきものあり、これ第三の理由なりとす。二、開鑿工事の目的㈠叙上の理由により航路の安全を計ると共に三陸沿岸及金華山沖漁場に出入する船舶の避難に便にし、航路短縮により時間及燃料の節約を行ひ、船舶の往復をして頻繁ならしむ。㈡渡波港の発展を援け本県水産物の需要を益々拡張せし178
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