女川町誌
233/1094

⑵本網商港改築の請願本網湾商港開築請願某等玆に宮城県牡鹿桃生両郡の有志七千餘を代表し本網湾開築の事を請願す。征清の戦局全く収りて国運新に興る苟も此新興の国運に乗して国威を顕揚せんと欲せは、航海通商の業を推励し以て利源を開発疏通するに務めざるへからず、其手段方策一にして足らさる可しと雖も、某等の所見を以てすれは商港の開築も亦其一たらずんはあらず、而して本県に於て殊に其緊要なるを信ず、請ふ其理由の二三を列挙せん。㈠横浜函館間の距離は四百七十七浬にして本県実に其中央に当れり、汽船の横浜よりするものも、又は函館よりするものも一昼夜の航行を経て本県の海上に来るか故に寄舶の港湾を此間に必要とするは自然の数なり、従来荻の浜を以て此必要に応せりと雖も湾内狭小にして多数の船舶を容るゝ能はさるのみならず、山路険難にして全く陸運の聯絡を欠く。㈡北海道の拓殖益々進むに随て、内地に対する貨物の運輸愈々頻繁を来すべく、而して該道の産物は石炭の如き、海産物の如き、其運輸回送の海運に依頼するもの多し、然るに横浜函館間には良好の港湾なきが故に船舶の不便尠からず、而して両所の中央に位する本県殊に此不便を感す。㈢本県は古来奥羽の中枢として貨物聚散の権を占有せり、岩手福島二県の如き苟も海運の便を利用せんと欲せは必ず本県を経由せざる可からず、横断鉄道敷設せらるゝ日には山形・秋田二県の如きも亦同一の状態を呈するに至るべし、然るに此重要の地位に立ち四県の咽喉たる本県にして一の良港なくんは家宅の門戸なきか如く、殖産通商の発達上に少からさる障害を与へん㈣軍事上よりするも商業上よりするも将た交通機関を整全する上よりするも、中央山脈を横断して陸前より羽前に貫通する鉄道の敷設を必要とす、現に石巻船形間の線路は第二期敷設線に予定せられ、而して私設石巻鉄道も亦此目的を以て敷設に着手せんとす、然るに仮令横断鉄道にして竣工するも良港なくして海路の連絡十分ならずんは鉄道の効用も全きを得ず。本県下に商港開築の必要なるは以上列挙せる事項に徴するも十分認知することを得べし、况んや政府も夙に其必要を認めたるの事実あるに於てをや。171

元のページ  ../index.html#233

このブックを見る