女川町誌
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見るへしと雖、今日に於ては先つ運河を以て陸地物産幅湊の地と運輸の便を開くを以て充分なりとすへし。然れとも女川湾より万石浦に至るの間谿間を掘鑿するときは、其の掘鑿より生する所の土石拾万余坪の半数は、之を湾内に投して上幅十間長七百八十間の物揚場を建築するを良策とすべし。又湾内に在る一個の岩礁(暗礁にあらず少く海面に突出するもの)は一方の沿岸より突出する岩石の頭なるが故に、之に標杭を建設して航路を示すの計画なり(越木礁のことならん)。 女川湾より万石浦に至るの間は岩山なりと雖、其最高点は女川湾零位(仮定器干潮なり)上僅に七十余尺にして其の距離は千百余間なるが故に大に困難なる工事とすべきにあらず。又万石浦澪筋浚渫より生ずる所の土砂三万余坪は之を澪筋の北側に積立て牽舟路となし、併て該澪以北二百余町歩の海面は新開塩田となるべき見込なり。運河の断面は女川湾より石巻に至るの間、底幅八間深さ最干潮面以下八尺とし、五百乃至六百石積の船舶をして容易に之を通航せしむるを得べきものとす。石巻より定川に至るの間は、既成北上運河と同様なる寸法を取り、即ち底幅七間深さ五尺となせり、運河の護岸及両岸の勾配は其土質実験の上方法を諸種に定め頗る堅牢なるものを採れり、其の細節は一々図面に記載したるを以て玆に贅せず。明治十八年八月内務上等技師山田寅吉⑵宮城県会の築港建議一、野蒜をして良港たらしめむとせぱ巨額の突堤を築造して防波設備を為さざるべからず、然るに女川湾は元来天然の良港にして其の工事の完成も速かなるべし、之れ女川の野蒜に優る第一なり。二、女川と野蒜を相比較せば、恰も天然と人造との差あるが如し、野蒜は仮令堅牢なる築堤を為すも劇浪怒濤と日夜相争ふに於て破壊を免れざるべく、又修補の費用万世に亘らば其の幾許なるを知らず。所謂野蒜は人造的港湾にして女川は天然の良港なり、之れ女川の野蒜に優る第二なり。三、野蒜は鳴瀬の河口にして洲汀を成し易く、日夜の淩泥巨額の費用を支消すべし、然るに女川は土砂排出の河川無し、之れ女川の野蒜に優る第三なり。164

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