女川町誌
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一般民衆にも温かいまなざしで御会釈遊ばされ、駅舎に近ずくや何所よりともなく君が代が歌い出され、居並ぶ一同は斉唱した。 構内に入らせらるゝや大岩駅長が御先導申上げた。 陛下はホームの外にあふれる周辺の民衆に右手に帽子をお取りになり、親しげな温顔で御会釈遊ばされつゝ菊の御紋章ある御召列車に御乗りになるや、われるような民衆の万才の声に送られて御発車遊ばされた。今日の各係の人々は皆漸く緊張から解放されホツトした面持であつた。 翌日いろいろの人に感想をきいて見たら 一、戦争でいためつけられた国民をお慰め下されたのだなあ。陛下からの御慰問は勿体ないなあ。 二、陛下から直接お言葉頂いた人は全く運のよい人だなあ。 三、戦後の国情を御視察になつたのだろう。 四、御質素な御服装だなあ。 五、陛下も戦争中は御心配やら、爆撃で皇居は焼野となるやら、現人神から人間天皇になられるやら、そして一部の人々からは騒がれるやら、お気の毒だなあ。 というようなことを聞かされた。986 986

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